自民党と民主党による議員定数削減を競い合う愚かな改革パフォーマンス

kojitakenさんのこちら『きまぐれな日々 百害あって一利なしの「比例区定数削減」にこだわる民主党』のエントリを読んで、これはもっと大きく問題にされるべきだと思った。

なんでも、麻生太郎首相が今年1月の党大会で国会議員の定数削減を表明したことで、衆院解散・総選挙が近づく中、改革姿勢をアピールするため、自民党民主党がここにきて競い合うように議員定数削減案を出しているのだ。

 民主党鳩山由紀夫代表は25日、自民党菅義偉選対副委員長が衆院議員定数(480)を50以上削減すべきだとの考えを示したことについて「私どもは80減らすと提案しており、たぶんマニフェスト政権公約)に書く。50じゃ足りない」と述べました。東京都内で記者団に語りました。

 民主党は、旧自由党と合併して臨んだ2003年の総選挙マニフェスト以来、衆院議員定数のうち比例代表(180)を80削減する方針を国政選挙で掲げています。鳩山氏の発言は、次期総選挙マニフェストでも同じ方針を盛り込むことを明言したものです。

 国民を代表する国会議員定数の削減は、民意の切り捨てにつながります。とりわけ、比例代表は政党の得票に応じて議席を配分するもので、いまの選挙制度では唯一民意を正確に反映する部分。その大幅な削減は、民意を正しく反映できないゆがみをいっそう高め、多様な民意を切り捨てることになります。
民意削る衆院比例80減/民主代表が政権公約へ

他にも、http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009052500606なんて案も出ている。

一方、自民党内からは、「参議院の定数削減を」(伊吹文明元幹事長)や、今月29日に「衆議院定数300議員連盟」発足予定(会長には太田誠一前農相が就任予定)。他にも、
憲法改正によって一院制を導入し定数500にする案や、現行の小選挙区300、比例代表180の衆院定数を小選挙区200、比例代表100にまで減らす案などが出ている。(参照:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2009052602000103.html


だがちょっとまってほしい。
そもそも日本の国会議員の定数は減らさなければいけないほど、そんなに多いのだろうか。そして、

 議員を減らして「主敵・官僚」と一体どうやってたたかうのか?!議員(国会・立法機関)の質量共の力こそが必要ではないか?・・・矛盾してないか?
(中略)
 国会議員は国民と国会を結ぶパイプであり、他の先進国と比較しても決して多くはない。それを大幅に削減することは民意を削ることに他ならない。

G8諸国の国会議員の人口比は以下のようになっている。
 イギリス、イタリア、フランス、カナダが人口約5〜7万人に国会議員1人、
 ドイツが10万人に1人、日本は17万人に1人
 ロシアが23万人に1人、アメリカが52万人に1人。


政党助成金の廃止を

 そこまで”真面目に”「税金の無駄をなくす」「自ら身を切る」というのなら、政党助成金をこそきっぱり廃止すべきだろう。
 毎年320億円にのぼる血税を山分けする政党助成金は、制度実施(1955年)から今年分を含めた15年間で総額4720億円。自民党の配分総額は2277億円、民主党は1190億円。自民党は本部収入の65・6%、民主党は84・2%を政党助成金に依存(2007年分)。

 口先の聞こえよく「無駄をなくす」というだけでなく、本気なら先ず政党助成金の受け取りを止めるべきだろう。共産党などは最初から受け取らずに、自前で資金を作り政党を運営しているのだ。
大脇道場 No.1172 自民と民主 民意削りを競う

定数削減の前に、現行の選挙制度の弊害を是正することが先決ではなかろうか。

現行の小選挙区比例代表並立制の問題点として、小選挙区で多様な民意が反映できないこと、比例区が11に分かれているために小政党には不利なこと、比例区に無所属候補が立候補できないことなどが挙げられている。こうしたことはこれまでの選挙でも実証されているし、学問的にも指摘されている。国会が国権の最高機関としての権能を果たすためには、選挙制度の改革こそが求められているのではないか。多様な民意を汲み取り、政治に反映させていく仕組みを作っていくことこそ、競い合うべき課題であろう。大政党に有利な選挙制度を守るための、また政権を維持するためだけの定数削減は避けるべきだ。マニフェストにおける定数削減は、選挙民に対して「国会議員自らが身を切っている」ことを見せるパフォーマンスとしては受けるかもしれないが、そうした発想はやめるべきだ。定数削減で年間約80億円(80人分)の国費が削減されたにしても、国民にとってはもっと多くのものが失われるかもしれない。
定数削減競い合う自民・民主のおかしさ:|NetIB-NEWS|ネットアイビーニュース

え〜と、いまの選挙制度で唯一、少数の民意まで反映できる比例の定数を、競い合って削減しようとしているこの2つの政党というのは、本当に民主主義国の政党なんでしょうか(笑)


(元記事で漢数字を使用している場合は、読みづらいのでアラビア数字に変えてあります。)