Nスペ・戦争 証言記録、12月の放送予定

今週末と来週末の放送予定です。


NHKスペシャル

2011年12月3日(土) 午後9:00〜9:49 総合
 証言記録 日本人の戦争 第1回 “大陸”に呑み込まれた日本軍 〜中国・インパール〜(仮
 http://www.nhk.or.jp/special/onair/111203.html


2011年12月4日(日) 午後9:00〜9:49 総合
 証言記録 日本人の戦争 第2回 太平洋・国力を越えた戦場 〜ニューギニアほか〜(仮)
 http://www.nhk.or.jp/special/onair/111204.html


上2つの放送は、おそらくNHKがこれまで戦争証言プロジェクトで集めてきた「NHK 戦争証言アーカイブス NHK 戦争証言アーカイブス」を短くまとめた総集編的なものだと思いますが、これまでのような深夜でなく9時から放送されるというところに意義があるのではないかと。このようなご時世ですので、ふだん見ないような人にこそ、ぜひみてもらいたいと思います。


シリーズ証言記録 兵士たちの戦争
http://www.nhk.or.jp/shogen/schedule/heishi_yotei.html

2011年12月10日(土) 午後4:30〜5:15 BSプレミアム
 証言記録 兵士たちの戦争 「占領地の治安戦 〜独立混成第4旅団〜」 

 日中戦争の開戦後、獲得した広大な占領地の治安維持を担うため編成された、独立混成第4旅団。警備を担った山西省では、共産党八路軍がゲリラ戦を展開し、宣伝工作によって民間人を味方につけ、日本軍を翻弄していました。敵と民間人との区別がつかない中、兵士たちは過酷な体験を強いられていきます。
 番組では、独立混成第4旅団の元将兵の証言から、これまであまり語られることのなかった中国での治安戦の実態と、今も消し去ることのできない戦場の記憶を伝えます。


2011年12月10日(土) 午後5:15〜5:58 BSプレミアム
 証言記録 兵士たちの戦争 「“鼠”輸送を命じられた最強部隊〜駆逐艦・第二水雷戦隊〜」 


個人的に関心が高いのは2月10日、放送予定の「占領地の治安戦 〜独立混成第4旅団〜」です。
北支方面軍・独立混成第四旅団は、中国華北山西省において治安戦に従事した部隊であり、そのとき抗日根拠地(適性地区)に対しておこなった討伐、燼滅(じんめつ)作戦は中国側では三光作戦とよばれています。
同旅団は1943年に第六二師団に改編され、1944年に沖縄に転戦し、そこで玉砕しています。
笠原十九司『日本軍の治安戦 - 日中戦争の実相』によれば、同旅団は戦後になって司令部参謀だった広瀬頼吾が中心となり戦友会「独旅会」を結成し、機関誌「独旅」を発行しますが、寄せられた回想録は難行軍や八路軍との苦戦が中心となっており、(戦闘が終わってからのものも含め)住民の殺害や戦時性暴力などは、注意深く除かれているそうです(同書p172を参考)。

日本軍の治安戦――日中戦争の実相 (シリーズ 戦争の経験を問う)日本軍の治安戦――日中戦争の実相 (シリーズ 戦争の経験を問う)
笠原 十九司

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一方、当ブログでは、以前、山西省での従軍体験を銅板に記録した浜田知明さんの作品を取り上げ、そこに刻まれた住民の殺害や性暴力という戦争の実態を紹介してきました。そのとき合わせて独立混成第四旅団に配属されていた作家の田村泰次郎さんの戦後の回想を紹介したことがありますので一部を再掲してみます。


浜田知明の山西省での従軍体験(2) - dj19の日記 浜田知明の山西省での従軍体験(2) - dj19の日記

「住民たちに対する日本軍の身の毛のよだつような所業は、私の7年間にわたる戦場生活で幾場面も見ているが、全戦争期間、全戦域にわたっては、それがどのくらいの場面になるのかは、想像を絶したものがあるにちがいない。」

短編『裸女のいる隊列』田村泰次郎(別冊『文藝春秋』42号、1954年10月)


また、同じ独立混成第四旅団には「兵士達の沖縄戦語り継ぐ会」の発起人である近藤一さんも配属されていました。近藤さんは戦後に、沖縄で無謀な玉砕戦を強いられ死んでいった仲間の悲惨さを語っていくなかで、中国での加害の事実に触れないままでは片手落ちになると考えるようになり戦争体験をいまも語り続けている元兵士の方です。

11月24日付の沖縄タイムスで近藤さんの証言が紹介されていましたので引用してみます。

沖縄タイムス | 元兵士と牛島中将の孫、沖縄戦の実相語る 沖縄タイムス | 元兵士と牛島中将の孫、沖縄戦の実相語る

 20歳で中国山西省の部隊に入隊した近藤さんは生きている中国人捕虜を銃剣で突き刺す訓練を受け、「人間を殺すことがなんでもなくなった」という当時の状況を説明した。中国では「略奪や強姦(ごうかん)、破壊など悪いことを全てやった」と述べ、「まさに日本兵は東洋の鬼だった」と証言した。

 近藤さんは1944年8月に上海から沖縄本島に移動。45年4月に上陸した米軍との戦闘に加わった。「装備がまるで違った。日本兵は命を捨てて米軍戦車に突っ込むなど、虫けらのように死んでいった。大本営が憎い」と涙を流しながら語った。さらに「住民避難は頭にはなく、ただ米軍と戦うだけだった。沖縄の住民は語り尽くせないほどの被害を受けた」と語った。


NHKの番組に話を戻しますが、敗戦から66年がたったいま、何が語られ、何が語られないのか、自分のやったことにどれぐらい向き合って生きてきたのか、それとも(これは人が苦しみを軽くし生きていくうえでの知恵なのかもしれませんが)思い出したくない体験を忘却して生きてきたのか、そのあたりに注目して視聴してみたいと思います。