皇民化教育と「集団自決」
「裁かれた沖縄戦」安仁屋政昭 編(晩聲社・1989年)のP351.352をテキスト化しました。
五 皇民化教育と「集団自決」 証人 金城重明
評論家の大宅壮一(おおや そういち)が沖縄にやって来て、沖縄戦で犠牲になった学徒達に対して「動物的忠誠心」という言葉を吐いて物議を醸し出したことがある。
(本文では脚注部分)
評論家の大宅壮一が、一九五九(昭和三四)年六月、『婦人公論』に連載中の「新日本おんな系図」の沖縄取材にきて痛烈な沖縄批判をした。摩文仁(まぶに)の南部戦跡をみて学徒隊などの犠牲の実態を「動物的忠誠心」「家畜化された盲従」と批判したことが反響を呼んだ。帰京してから大宅壮一は、『文薮春秋』の九月号に、つぎのように書いている。
沖縄の靖国神社ともいうべき『ひめゆりの塔』や『健児之塔』に案内されて、非戦闘員である多くの男女学生が、洞窟の中に追いつめられ、米軍の降伏勧告をしりぞけて自決したいきさつをきき、そのむごたらしさに驚くとともに、今後もありうることだから、こういう死にかたというものは、この際再検討されなければならない。その"忠誠心"をたたえるだけではいけない。批判をともなわない忠誠心は、その"純粋性"の故に美化されやすいが、これは奴隷道徳の一種で、極端ないいかたをすれば、飼いならされた家畜の主人にたいする忠誠心のようなものである。こういった忠誠心は、どうして生まれたかというと、多年の権力者の"動物的訓練"の結果と見られる点が多分にある。
彼の言っていることは一面あたっているけども、何がそして誰がこの若者達に動物的忠誠心を植え付けて死に至らしめたかを問わなければならない。彼らは誤った皇民化教育の最大の犠牲者だったのである。