このままでは低所得者層は不相応な負担を強いられ続けられそう
民主党、自民党がそろって消費税増税を言い出しているようです。最近はニュース番組はあまり見ていないんだけど、id:kojitakenさんのblogなどを読んでいると、マスコミも勝手に「財政再建のために消費税増税を」なんて先走った主張を繰り返しているようです。こないだ、たまたま見た番組でも「消費税を何パーセントまで上げればいいのか」なんてことをやってたなぁ。
これはさすがに順番がめちゃくちゃではないかと…
いや、そんなことは「高校無償化」や「子ども手当」導入のときにも思ったのだが*1、なぜ政府は、所得税の累進性を再強化するなど、所得再分配を並行して先にやろうとしないんでしょうか。このまま安易に消費税が増税されることになれば、低所得者層はさらに不相応な負担を強いられ続けられることになってしまいます。
■消費税の逆進性と所得課税の非累進性 - 紙屋研究所
http://d.hatena.ne.jp/kamiyakenkyujo/20100620/1277051091
消費税の逆進性の根源には、消費する時点で勤労所得には根こそぎ課税して、消費されない資本所得(利潤、利子、配当など)にはまったく課税しないという不公平なしくみがあります。
(中略)日本の所得税制が超高所得者に有利な逆進課税になっている動かぬ証拠 - kojitakenの日記
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20100619/1276918374所得階級別に所得税負担率を示すと、あるラインから、いわゆる大金持ちほど負担が軽くなってしまっているという事実が示されている。
なぜこんなことになってしまっているかといえば、ひとことでいえば「分離課税」の結果です。リンク先の「追記」にあるように、「『株式等の譲渡所得等』の割合が急上昇」しているからです。
■「金持ち天国」の日本 ─ 「やせ我慢根性」から脱却せよ - きまぐれな日々
http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1085.html
所得税を増税すべきだというと、誰しも累進性の再強化を思い浮かべるが、神野氏の著書『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書、2007年)を読んだ方なら誰しも印象に残っているに違いないのは、日本の所得税制が実際には累進的になっておらず、高所得者層ではほとんど比例的になっているという指摘だ(前掲書67頁)。その理由として神野氏が挙げているのが、金持ち(=超富裕層、筆者註)の所得は給与所得ではなく利子所得、配当所得、不動産所得などの資産所得が多いが、日本の所得税制ではこれら資産所得の多くを分離課税にして累進税率の適用除外にしていることだ。
本にはグラフが載っていて、2500万円以上の所得階層の所得税実効負担率が、2000万〜2500万円の階層よりも低くなっており、その原因が分離課税による課税漏れであることが示されている(前掲書68頁)。
グラフ:『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書、2007年)p68より
■「日本の法人税は高すぎる」というが/三大銀行 10年以上 法人税ゼロ/この不公平税制こそただせ/志位委員長が指摘 - しんぶん赤旗
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-06-29/2010062901_01_1.html
「大銀行は、『不良債権処理』の名で国民の税金を何十兆円も入れてもらいながら、この間、中小企業へのひどい貸し渋り、貸しはがしをつづけてきました。その大銀行が/法人税ゼロとなっている」
■消費税を考える重要情報/日本共産党
http://www.jcp.or.jp/tokusyu-10/08-syouhizei/
消費税は、「社会保障のため」といって導入・増税されましたが、実態は法人税減税による減収分の「穴埋め」になってしまったのです。
今度の消費税増税計画も、大企業の法人税引き下げとセットで打ち出されてます。
(中略)
今度の選挙で、民主党と自民党がそろって「消費税10%」を法人税減税とセットで打ち出している
(中略)
財界は、法人税率を15%も下げろといっています。経済産業省も、同様の数字をあげています。これは、消費税率にすると4%分になります。これでは、消費税を5%上げた分は、ほとんど法人税減税の“穴うめ”に使われてしまいます。こんなやり方では、財政再建にも、社会保障財源にも役立たず、庶民の家計をこわし、消費を冷やし、景気をいよいよ悪化させるだけです。
(中略)「法人税は高い」は財界の身勝手なキャンペーン
財界は、「日本の法人税は40%で高すぎる」といいます。しかし、日本の大企業は、「研究開発減税」「外国税額控除」など、さまざまな優遇で税金をまけてもらい、実際の法人税負担率はヨーロッパと変わらない 30%程度です。
■法人税 「40%は高い」といいながら実は…/ソニー12% 住友化学16% - しんぶん赤旗
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-06-24/2010062401_01_1.html
■所得税の累進課税がもつメリット/飯田泰之(エコノミスト)
『日本を変える「知」』(2009年、光文社)p58~60より
再分配の一番いい方法は、所得税の累進課税をする、最貧層には給付金を与える…以上終わりというものです。
ファビュラス・ディケード(素晴らしき10年)という言葉があります。これはアメリカの90年代、特にクリントン政権時代のアメリカ経済を指します。
アメリカの90年代は、最後のほうは戦争があり、財政状況も急速に悪くなりましたが、実体経済はおおむね好調でした。90年代のアメリカは、何がよかったかというと、累進課税システムがきわめて上手く働いたんです。
累進課税システムは、収入が高くなるにつれて税率があがっていくシステムです。日本の場合は、所得に応じて6段階の税率があって、課税所得1800万円以上の人は税率40%、195万円以下は税率5%になります。つまり、所得があがればあがるほど、所得の伸び以上に税金を納めなければならないというシステムです。
累進システムの利点は、景気がよくなりすぎると、つまり景気が過熱すると、多くの人の所得があがり、たくさん税金を納めるようになります。その結果、景気に歯止めがかかるわけです。一方、景気が悪くなると、みんな税金が安くなるので、景気の悪化に歯止めがかかります。これを自動安定化機能といいます。
アメリカ民主党は、この累進課税の階段を少しきつくしたんですね。もちろん民主党政権なので、最初は所得の不平等化を防ぐために、この累進をきつくしたんですが、その結果、経済が自然に安定化するようになりました。
景気がよくなりすぎると、みんな累進の階段を一段登ってしまうし、景気が悪くなると、みんな税率が下がる。景気対策のために減税するかしないかというとき、いちいち立法のプロセスを経て調整する必要がない。景気が悪くなると自動的に減税され、景気がよくなると自動的に増税されるわけです。
ところが日本の場合、この累進をどんどんどんどんゆるくしていったんです。90年代のアメリカとまったく逆なんですね。とくに97年の橋本改革以来、富裕層はどんどん税金が下がっています。これは経済の不安定化要因になります。
最近、格差がなんでこんなに広がったのか、という問題提起を聞くたびに、言葉は悪いですが、「何いってるの?」という気がするんです。そりゃあ、金持ちの税率を下げて、貧乏人の税率を上げたんだから、不平等にならないほうがおかしいだろうと思うんです。
日本の場合、金持ちの税率を下げつづけ、貧乏人の税率をたいして上げなかったので、財政は当然赤字になりました。さらに、この累進の坂がゆるくなることで、経済の安定性を保つシステムが働かなくなる。景気が悪くなると自動的に減税、景気がよくなると自動的に増税という安定化機能が弱くなったわけですから、経済も当然不安定化します。
(以下略)
(飯田泰之:エコノミスト。駒澤大学経済学部准教授。専門は経済政策、マクロ経済学。)
■消費税増税は、もはや仕方ないことなのか? - フンニャロメ日記
http://funnyarome.blog82.fc2.com/blog-entry-416.html
(消費税)増税に反対しているのは、3党。
国民新党は、消費税率アップならば連立離脱もあり得るとしている。
社民党は、消費税の引き上げはしないと主張している。
共産党は、消費増税には絶対に反対としている。
*1:そこらへんのことは秋原葉月さんとほぼ同意見なので、こちらのエントリを参照:「子ども手当と子どもの貧困」http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-273.html「「全ての子どもは等しく社会が育てる。従って所得制限は設けない」という子ども手当の理念には賛成です。しかし、その政策は、格差が激しく所得の再分配機能がうまくいっていない今の日本社会では、富裕層ほど得をし、財源ばかり喰ってしまう悪制度になってしまうのではのないかと私は危惧してます。」